多汗症について
汗は体温調節を行っています。体温が上がると汗が出て、汗の気化熱で体温を下げます。必要以上に汗が出て皮膚の表面が汗で濡れてしまう状態を多汗症といいます。
多汗症の種類
汗には、温度が高い時に出る温熱性発汗、精神的に緊張した時に出る精神性発汗、辛いものを食べた時に出る味覚性発汗があります。
また、原因になる病気があって多汗が生じる続発性多汗症と、とくに病気がなく健康な人に発生する原発性多汗症とがあります。さらに、多汗部位が全身に広がっている全身性多汗症と、体の一部で発汗が増えている限局性多汗症とがあります。
限局性多汗症は、多くはわきの下、手のひら、足の裏に発生します。これらの部位は精神性発汗部位であり、精神的な緊張により発汗が増えます。手のひらの多汗の人は手で触れるものが汗で濡れるために、書類などが濡れて困るなど日常的に困る場面が多くみられます。また、他人に手を触れることを避け、劣等感をもっていることもあります。 全身性多汗症では、甲状腺機能亢進症や褐色細胞腫などの内分泌・代謝性疾患、その他 悪性腫瘍、感染症、中枢神経疾患などが原因になっていることがあります。
多汗症の治療方法
多汗症の治療法には外用薬治療、水道水イオントフォレーシス、ボツリヌス毒素皮内注射治療・交感神経遮断治療などがあります。(クリニックでは交感神経遮断治療は行っていません)
①外用療法
腋窩、手のひら、足のうらに20~30%塩化アルミニウム軟膏を寝る前に外用します。通常は一日1回就寝前にぬります。効果がでるまで2~3週間かかりますので継続して外用してください。汗が止まってきたら外用回数を1週間に2~3回に減らしてもかまいませんが、中止すると再発することがあります。皮膚のかさつきがひどくなったら、しばらく中止し、改善されたら再開してください。手足の汗の量が多い人は塩化アルミニウム溶液外用後サランラップで覆い密封療法を行うとより効果的です。
②水道水イオントフォレーシス
手のひら、足底の多汗症の治療に適した方法です。多汗部位を水道水に浸し、10~20mAの直流電流を流します。電極の上にスポンジを乗せ、手のひらを密着させ手足が水に沈んでしまわない程度に水道水を入れます。治療効果を維持するためには1週間に1~2回行ったほうが良いでしょう。 作用機序として通電することにより生じる水素イオンが汗の出口を障害して汗を出にくくするのではないかといわれております。
③エクロックゲル
保険で使用できる、わきの汗の治療に有効なぬり薬です。
交感神経からでるアセチルコリンによる刺激を阻害するため、汗の分泌を抑えることができます。
④ボツリヌス毒素注射
ボツリヌス毒素を皮内に注射すると、エクリン汗腺の活動を抑制し、汗の分泌を抑えることができます。ボトックスは、ボツリヌス菌から抽出されたたんぱく質の一種で、アセチルコリン分泌阻害のために、汗の分泌を抑える働きがあります。以前から、眼瞼けいれんの治療のために用いられてきた薬でありますから、安全性の高い薬剤です。
⑤胸腔鏡を使った胸部交感神経節遮断術
この方法では確実に手のひらの汗は止まりますが、欠点として体幹に汗が現れるなど代償性多汗(たいしょうせいたかん)が現れます。
⑥漢方治療
発汗をおさえる漢方を、個人の体質に応じて内服していただきます。
うえだ皮膚科内科 高杉院
当院では、内科、漢方内科、皮膚科と複数の科を併設しており、各科固有の疾患に対する治療だけでなく、疾患によっては 科を超えて協力することによって、診断と治療の向上に寄与し、より幅の広い治療がきることを目標にしています。内科では、一般内科疾患全般を診療し、漢方治療を採り入れることによって、皮膚疾患や婦人科疾患、小児疾患など幅広い疾患に至るまで対応しています。皮膚科では、一般皮膚科分野に加え、小手術も行っています。
