熱傷(やけど)とは、熱による皮膚・粘膜の障害のことであり、日常で最もありふれた外傷のひとつです。
原因として多いものには、熱湯や油が多く、小児の場合は炊飯器からの水蒸気やアイロンなどがあります。また、これら高温のものだけではなく、ホットカーペットや湯たんぽに長時間あたっていたことによる低温熱傷もあります。低温熱傷は軽傷に思えて深くまで熱傷が到達し、長期に治療がかかることがあるため要注意です。
熱傷はあとからじわじわ痛みが出現し、場合によっては壊死した組織に細菌感染を起こすと、広範囲の受傷ではなくても死に至る場合もあります。さらに、痛みがなくても、熱傷が深くまで到達していると、逆に痛みが全くない場合もあるので注意が必要です。
また熱傷の大きな問題点の一つは、ケロイドや肥厚性瘢痕やひきつれを起こすこともあり、整容面でも機能面でも問題になることがあります。また、将来的に熱傷瘢痕がんが発症することもあるので、長期にわたって経過観察が必要になることもあります。
これらの障害が出現するかどうかは、はじめの熱傷の重症度が大きく関与するため、できるだけ早期に冷やして深達度を深くしないようにすること、早く病院を受診して治療を早くから開始することが大切になります。
熱傷の分類
- 1度
発赤のみで、傷あとを残さずに治癒します。 - 2度
浅達性:真皮層の浅い部分までのやけどです。水疱を作りますが、浅いもので、目立つ傷あとを残しません。
深達性:真皮層の深い部分まで及んだやけどです。治癒に時間がかかり、傷あとを残す可能性があります。 - 3度
皮膚全体が損傷を受け壊死した状態です。範囲が広くなると、全身に影響を及ぼし、感染を合併し、敗血症をきたしたり、植皮が必要なこともあります。
熱傷の治療方法
初期
すぐに冷やすことです。数時間 しっかり冷やしてください。組織の損傷を防ぐためにこの時間が一番大切です。また、創傷をくいとめる初期の治療を行うため、医院を受診することも大切です。
中期
浸出液の多い状態の時は、浸出液を乾かしていく治療を行います。傷を洗って清潔にし、軟膏を塗ったあとガーゼをあてます。
後期
浸出液が減ってきましたら、皮膚を上皮化させていく治療を行います。この時点になりましたら、よく洗ったあと、感染を起こしていなければ、皮膚の上皮化を促進していくために、上皮化させるための外用を塗ったあと、傷を乾かさないようにラップ療法など行います。傷を治すためには、傷を乾かさないことが大切です。傷口からでる浸出液には、傷の治りを早くする成分が含まれています。しかし、感染を起こしているときは、ラップ療法によりさらに悪化させるときもありますから、傷の状態を見極めて治療をすることがとても大切です。完全に上皮化させるまで、注意深く観察しながら治療をすすめていきます。
熱傷の予防方法
やけどの原因となるものは、いたるところにあります。やけどを起こしやすいものをよく把握し、未然に防ぐことがとても大切です。また、低温熱傷は深くなりやすく、治療にも時間がかかります。湯たんぽなどはよく注意して使用しましょう。
院長からのコメント
最近は、傷を上皮化させるために有効な薬が開発されていますので、以前にくらべれば、かなり早く治癒するようになってきました。しかし、やはり、早期治療、病期に合った治療がとても大切です。診察を受けて的確な治療を受けていただくことをおすすめします。
乳児、小児のやけどは防止できることがたくさんあります。大人になっても瘢痕が残っているということは防ぎたいものです。まわりにいる大人が十分注意してあげてください。
また、低温熱傷は深くなりがちで、治療にとても時間がかかります。使用の仕方を一度考えてみてください。
うえだ皮膚科内科 高杉院
当院では、内科、漢方内科、皮膚科と複数の科を併設しており、各科固有の疾患に対する治療だけでなく、疾患によっては 科を超えて協力することによって、診断と治療の向上に寄与し、より幅の広い治療がきることを目標にしています。内科では、一般内科疾患全般を診療し、漢方治療を採り入れることによって、皮膚疾患や婦人科疾患、小児疾患など幅広い疾患に至るまで対応しています。皮膚科では、一般皮膚科分野に加え、小手術も行っています。
